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相続税評価と遺産分割の評価は別物|損しない基準の選び方

相続で不動産を分けるとき、「相続税の計算に使う評価額と、遺産分割で使う評価額は同じ」と思い込んでいる人は少なくありません。

実はこの2つはまったく別の考え方です。相続税は路線価などの決まった基準で計算しますが、遺産分割(誰がどれだけ受け取るか)で使う価値は、原則として実勢価格=実際に売ったらいくらかを基準にします。

この違いを知らないと、「路線価で分けたら損をした」という事態になりかねません。この記事で、2つの評価の違いを整理します。

※本記事は不動産の評価に関する一般的な情報をまとめたものです。相続税の申告や評価額の計算は税理士、遺産分割の法的な取り扱いや調停・裁判は弁護士など、それぞれの専門家にご確認ください。

なぜ2つの評価が別物なのか

理由は目的が違うからです。相続税評価は「税金を公平に計算する」ための価格で、全国一律のルール(財産評価基本通達)に沿って算出します。

一方、遺産分割の評価は「相続人どうしで財産を公平に分ける」ためのもので、実際の市場価値を基準にするのが実務の考え方です。目的が違えば基準も変わる、と理解するのが出発点です。

家庭裁判所での遺産分割の実務では、不動産の価値は実勢価格(市場価格)を基準にします。

具体的には、不動産会社に査定書を作ってもらい、その額を実勢価格として主張していく形が一般的です。

相続税の路線価をそのまま分割の基準にしなければならない、というルールはありません。

ここがポイント

相続税評価額(路線価)は「税計算のための基準」、遺産分割の評価額は「実際の市場価値」が原則です。2つを混同しないことが、損をしないための第一歩です。

不動産の「4つの価格」を整理する

混乱の元は、1つの不動産に複数の価格が存在することです。まず全体像を押さえましょう。

価格目的水準(公示価格比)
実勢価格(時価)実際の売買・遺産分割ほぼ100%
公示価格取引の指標基準(100%)
相続税評価額(路線価)相続税・贈与税約80%
固定資産税評価額固定資産税など約70%

金額の大小はおおむね「実勢価格 > 路線価 > 固定資産税評価額」の順になります。

相続税評価額(路線価)は時価の約8割程度、固定資産税評価額は約7割程度が目安です。

つまり、路線価や固定資産税評価額をそのまま遺産分割の基準にすると、実際の価値より低く見積もることになります。

具体例で見る:基準を間違えると損をする

実勢価格4,000万円の土地を、兄が相続し、弟に相続分に応じた代償金を払うケースを考えます。

もし遺産分割でも路線価(時価の8割=約3,200万円)を基準にしてしまうと、弟が受け取る代償金はその半分の約1,600万円

しかし本来の実勢価格4,000万円で計算すれば約2,000万円のはずです。

基準を路線価にしただけで、弟は約400万円損をする計算になります。

逆に土地を取得する兄にとっては有利です。

このように、どの価格を基準にするかで受け取る額が大きく変わります。相続人全員が合意するなら基準は自由ですが、自分がどちら側かによって有利・不利が変わる点は理解しておくべきです。

注意点

代償金を受け取る側は実勢価格が基準のほうが有利、支払う側は路線価のほうが有利です。安易に「路線価でいい」と同意する前に、実勢価格との差を必ず確認してください。

遺産分割では実勢価格が基準、でも合意優先

遺産分割の評価にどの基準を使うかについて、法律上の決まりはありません。

最終的には相続人全員の合意で決まります

全員が「固定資産税評価額でいい」と納得すればそれでよく、その場合は手間なく話がまとまります。

もめて調停・裁判になった場合は、実勢価格を基準に考えるのが実務です。

調停では路線価を参考に合意を得ることも多いとされますが、路線価は時価そのものではないため、地価変動が激しい時期や個別事情がある場合には、不動産鑑定士による鑑定評価が検討されます。

どの基準で主張するのが有利かは、弁護士に相談してください。

相続税申告額を分割に流用するときの注意

もう一つ落とし穴があります。

相続税の申告額をそのまま遺産分割の基準に使うと、実態とずれることがある点です。

相続税では小規模宅地等の特例により、居住用・事業用の宅地が最大8割減額されることがあります。

この軽減後の額を分割の基準にすると、不動産の価値を極端に低く見積もることになります。

遺産分割で相続税申告額を参考にする場合は、特例による軽減前の価格に補正する必要があります。

この判断は税理士・弁護士に確認してください。

よくある質問

相続税と遺産分割で評価額が違っても問題ない?

問題ありません。

目的が異なるので、相続税は路線価などで計算し、遺産分割は実勢価格を基準にする、という使い分けはむしろ正しい進め方です。

2つを混同しないことが大切です。

実勢価格はどうやって調べる?

不動産会社の査定で目安がつかめます。

まず匿名の相場チェックや無料査定で概算を把握し、正式な話し合いでは訪問査定や複数社の査定を使うと説得力が増します。

国土交通省の取引価格情報も参考になります。

相続人が合意すればどの基準でもいい?

はい。

全員が納得すれば固定資産税評価額でも路線価でも構いません。

ただし自分が代償金を受け取る側か払う側かで有利・不利が変わるため、安易に合意する前に価値の目安を確認しておくことをおすすめします。

4つの価格の調べ方

それぞれの価格は自分で調べられます。

用途に応じて確認先が異なります。

相続税評価額(路線価)は国税庁の「路線価図・評価倍率表」で確認でき、路線価×面積×補正率で計算します。

路線価がない倍率地域では、固定資産税評価額×倍率で算出します。ただし土地の形状補正などがあり、正確な計算は複雑なので税理士に依頼するのが確実です。

固定資産税評価額は、毎年届く固定資産税の課税明細書に記載されています。

市区町村で評価証明書を取ることもできます。

実勢価格(時価)は、不動産会社の査定で目安がつかめるほか、国土交通省の取引価格情報で近隣の過去の売買事例を調べられます。

分割の話し合いに使うなら、まず実勢価格の目安を把握しておくのが重要です。

固定資産税評価額から相続税評価額の目安を出す

厳密な計算は専門家に任せるとして、ざっくりした目安なら自分でも出せます。

固定資産税評価額は時価の約7割、相続税評価額は約8割が目安なので、「固定資産税評価額 ÷ 0.7 × 0.8(=約1.14倍)」で相続税評価額のおおよその見当がつきます。

あくまで参考値で、正確な額とは異なりますが、全体像をつかむのに役立ちます。

ここがポイント

「固定資産税評価額 ÷ 0.7 × 0.8」で相続税評価額の目安が計算できます。

ただしあくまで参考値です。

正確な計算は税理士に依頼しましょう。

もめそうなときの進め方

不動産が絡む遺産分割は、価値の捉え方の違いから対立が起きやすい分野です。相続人の一人が「安く評価して自分が取得したい」、別の一人が「高く評価して代償金を多く受け取りたい」と、立場によって望む評価額が逆になるためです。

こうした対立を避けるには、早い段階で全員が同じ実勢価格の目安を共有することが有効です。誰か一人が有利な数字を持ち出す前に、複数社の査定で客観的な幅を示しておくと、話し合いの土台ができます。

それでも合意できない場合は、弁護士を通じて調停を検討し、必要に応じて鑑定評価に進む流れになります。税額に関わる部分は税理士、分け方の法的な扱いは弁護士と、専門家を使い分けるのが円滑です。

  • 複数社の査定で客観的な実勢価格の幅を共有する
  • 合意できない場合は弁護士を通じて調停を検討する
  • 税額は税理士、分け方の法的な扱いは弁護士に相談する

マンションと戸建てで評価の考え方は違う?

基本の考え方は同じで、遺産分割では実勢価格が基準です。

ただしマンションは路線価をそのまま当てはめにくく、固定資産税評価額が全物件にある戸建て・マンション共通の参考値として使いやすい面があります。

いずれの場合も、路線価や固定資産税評価額は時価より低めなので、分割の基準にする際は実勢価格との差を意識してください。

まとめ

相続税評価と遺産分割評価は別物で、分割では実勢価格が基準になるのが原則です。まずは実勢価格の目安を査定でつかんでから話し合いに臨み、税や法的な判断は税理士・弁護士に確認しながら進めてみてください。

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