SHARE:

財産分与で不動産の評価額が決まらない・揉める時の対処法

離婚の財産分与で、家の評価額をめぐって夫婦の主張が食い違い、話が前に進まない——これはよくある事態です。

一方は「高く評価して代償金を多く受け取りたい」、もう一方は「低く評価して支払いを抑えたい」と、立場によって望む金額が正反対になるため、対立が起きやすいのです。

この記事では、評価額が決まらないときの具体的な対処法を、話し合いの段階から順に整理します。

※本記事は不動産の価格に関する一般的な情報をまとめたものです。財産分与の法的な取り扱いや個別の判断は弁護士に、税務は税理士にご確認ください。

なぜ評価額で揉めるのか

家は預貯金と違って「いくら」と一義的に決まりません。

同じ家でも、依頼する不動産会社によって査定額に幅が出ますし、時価・路線価・固定資産税評価額など複数の価格が存在します。

どの価格を、どの会社の査定を基準にするかで金額が変わるため、自分に有利な数字を主張し合うと平行線になります。

しかも財産分与では、家を引き継ぐ側と出ていく側で利害が真逆です。

引き継ぐ側は評価額が低いほど代償金が少なくて済み、出ていく側は評価額が高いほど多く受け取れる。

この構造的な対立が、揉める根本原因です。

対処法①:複数社の査定で客観的な幅を出す

最初のステップは、双方がそれぞれ複数の不動産会社に査定を依頼し、客観的な価格の幅を把握することです。1社だけの査定だと「その会社が有利な数字を出しただけ」と疑われますが、複数社の査定がそろえば、おおよその相場観が見えてきます。

実務でも、双方が査定書を出し合い、極端な数字を除いた中間あたりで合意を探る、という進め方がよく行われます。まずは感情ではなく、複数の客観的な数字を土台に据えることが解決の糸口です。

ここがポイント

1社だけでなく、双方がそれぞれ複数社に査定を依頼することで「恣意的な数字」という疑いを払拭できます。客観的な幅を示すことが、話し合いを前進させる第一歩です。

対処法②:中間額での合意を探る

双方の査定額に開きがあっても、極端でなければ中間額で折り合える可能性があります。

例えば夫側3,200万円・妻側2,800万円なら、間をとった3,000万円で合意する、といった形です。

調停の場でも、双方の査定が不合理でなければ、その中間額で合意できないか調整が試みられます。

お互いが少しずつ譲る前提で、中間あたりを着地点として提案してみるのは現実的な方法です。完璧に「正しい」評価額は存在しないため、双方が納得できる落としどころを探る姿勢が話を進めます。

対処法③:それでも決まらないなら鑑定・調停

査定書を出し合っても中間額で折り合えない場合は、次の段階に進みます。

不動産鑑定評価書を取る

不動産鑑定士が法的効力のある評価額を算出する(費用20〜30万円〜)。客観的な根拠として強い。

離婚調停を申し立てる

家庭裁判所で第三者を交えて話し合う。調停でも合意できなければ、裁判所選任の鑑定士による鑑定に進むことがある。

注意点

鑑定は費用がかかり、裁判所経由だとさらに高額になりがちです。

まずは無料の査定書で合意を試み、どうしても決まらないときの最終手段と考えるのが費用面でも合理的です。

調停や鑑定に進むべきかの判断は、弁護士に相談してください。

具体例で見る:段階を追った解決

夫が家を引き継ぎたいが、評価額で妻と対立しているケース。まず双方が2社ずつ査定を依頼したところ、2,800万〜3,300万円の範囲に収まりました。

極端な数字を除くと3,000万円前後が妥当と見えたため、中間の3,050万円で合意——鑑定や調停に進まずに解決できました。

一方、夫側2,500万円・妻側3,500万円1,000万円も開き、複数社の査定でも埋まらないケースでは、法的効力のある鑑定評価書を取り、それをもとに調停で決着を図る流れになります。開きの大きさに応じて、段階的に手段を上げていくのが基本です。

揉めないための予防策

対立を深めないコツは、早い段階で双方が同じ情報を共有することです。

どちらか一方が有利な査定書を突然出すと不信感が生まれます。

可能なら、最初から一緒に複数社へ査定を依頼し、同じ数字を見ながら話し合う方が、余計な対立を避けられます。

また、査定額はあくまで売却予想であり、その価格で必ず売れるわけではないと双方が理解しておくことも大切です。数字を絶対視せず、幅のあるものとして扱う姿勢が、歩み寄りを生みます。

ここがポイント

最初から一緒に複数社へ査定を依頼し、同じ数字を見ながら話し合うことで、「相手が勝手に決めた額」という不信感をなくせます。予防策として最も効果的なアプローチです。

第三者の目を早めに入れる

当事者だけで話し合うと、どうしても自分に有利な数字にこだわりがちで、対立が長引きます。

早い段階で不動産会社や弁護士といった第三者の客観的な視点を入れると、話が動きやすくなります。

複数社の査定という客観的な数字があれば、「これは相手が勝手に決めた額ではない」と双方が受け止めやすくなるためです。

特に、評価額の対立が離婚全体の解決を止めてしまっているなら、専門家に相談する価値は大きいです。評価額だけにこだわって時間とエネルギーを消耗するより、客観的な相場をもとに現実的な着地点を見つける方が、結果的に双方にとって良い解決になることが多いものです。

どうしても折り合わないときは、鑑定や調停という手段があることも念頭に置きつつ、まずは客観的な数字の共有から始めてみてください。

よくある質問

相手が異常に高い(低い)査定書を出してきたら?

自分でも複数社の査定を取り、客観的な幅を示すのが有効です。

1社の極端な数字は、他の複数社の査定と並べれば妥当でないことが見えてきます。

それでも折り合わなければ、鑑定や調停を弁護士と検討してください。

評価額が決まらないと離婚できない?

財産分与の合意ができなくても、離婚自体は成立させられる場合があります。

財産分与は離婚後に請求することも可能です(期限あり)。

進め方は個別事情によるので、弁護士に相談してください。

鑑定費用はどちらが負担する?

私的に依頼するなら依頼した側の負担が基本です。

調停で裁判所が鑑定する場合は予納金の負担ルールが別にあります。

費用の取り決めは弁護士に相談してください。

評価の時点はいつを基準にする?

意外と見落とされがちなのが、「いつ時点の価値で評価するか」という論点です。不動産の価値は時期によって変動するため、基準日をいつにするかで評価額が変わります。

実務では、財産分与の対象財産の範囲は別居時、評価額は離婚成立時(裁判なら口頭弁論終結時)を基準にすることが多いとされます。

別居してから離婚成立まで時間が空くと、その間に地価が動いて評価額が変わることもあります。どの時点を基準にするかで揉める場合もあるため、この点も含めて弁護士に相談しながら進めると安心です。

特有財産がある場合の注意

家の購入時に、結婚前の貯金や親からの贈与など「特有財産」を頭金に充てていた場合、その分は財産分与の対象から除かれることがあります。例えば夫が独身時代の貯金から頭金を出していれば、その寄与度に応じて分与割合が調整される、という判断がなされることもあります。

この計算は複雑で、単純に「評価額の半分」とはならないケースです。頭金の出所や割合が絡む場合は、評価額を決める前に弁護士に相談して、正しい分与額の考え方を確認しておくことをおすすめします。

感情的な対立をこじらせないために

評価額の争いは、金額そのものより「相手に有利になるのが許せない」という感情がこじらせる原因になりがちです。冷静に進めるコツは、評価額を「勝ち負け」ではなく「客観的な事実の確認」として扱うことです。

複数社の査定という第三者の数字を土台にすれば、どちらかが恣意的に決めた額ではないため、感情的な反発が起きにくくなります。

また、直接の話し合いが難しいなら、早めに弁護士など第三者を間に入れるのも有効です。

当事者同士だと感情が先立ちますが、専門家が客観的な相場観を示すことで、話が前に進みやすくなります。

評価額で長く揉めると、離婚全体の解決も遅れてしまうため、こじれる前に手を打つことが大切です。

まとめ

  • 複数社の査定で客観的な幅を出し、中間額での合意を探るのが基本の流れ
  • 折り合わなければ不動産鑑定や離婚調停へ段階的に進める
  • 法的な判断や費用の取り決めは弁護士に相談しながら進める

評価額が決まらないときは、複数社の査定で客観的な幅を出し、中間額での合意を探るのが基本の流れです。それでも折り合わなければ鑑定や調停へ——と段階的に進めつつ、法的な判断は弁護士に相談しながら進めてみてください。

あなたへのおすすめ